「娘が巣立つ朝」が文庫になりました!

 こんにちは、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。心地良くお過ごしでありますことを願っております。

 本日は文庫の発売のご報告です。「娘が巣立つ朝」(文春文庫)が発売中です。
 合田里美様の素敵な絵が目印です!

 本作の主人公は高梨家の一人娘、真奈、父の健一、母の智子の三人。
 一人娘の真奈が婚約し、その結婚準備のなかで、高梨家の人々はそれぞれにこんな思いを抱いています。

■真奈

〝どうしてお金の話をすると、
 みじめな気持ちになるんだろう?〟

 マウスケア用品の会社で働く真奈は、結婚に向けて貯蓄に励んできた堅実な娘。婚約者の優吾は眉目秀麗、性格温厚。20代のうちは「自分に投資」が信条で、貯金はそれほどありません。でも彼の実家はセレブな資産家。

 恋人時代はうまくいっていたのに、婚約してからの二人は喧嘩ばかり。
 その理由は挙式や住まい、家計に関する二人の考え方と金銭感覚の違い。
 さらには互いの実家の経済的格差、一癖ある優吾の両親の言動も絡んできます。

 慎ましく生きてきた高梨家の人々の心に、それらは影を落とすのでした。
 悩みながらも真奈は進むのですが……。

■父、健一

〝熟年世代の男と女の友情は
 成立するのだろうか〟

 二人目の主人公は真奈の父、健一。娘の婚礼費用が雪だるまのようにふくらんでいく重圧に耐えています。
 健一は若い頃、映画とギターが好きでしたが、50代になった今は映画館に行くことも音楽を聴くこともありません。
 娘の結婚準備が進むななか、彼は母が入所している静岡県三島市の介護施設で、地元の音楽ボランティアの「リコ」に出会います。

 健一より「少しお姉さん」のリコこと真理子はBARBEE BOYSの杏子さんやREBECCAのNOKKOさんに影響を受けたミュージシャン。
 若い頃は東京で活動していましたが、今は郷里で音楽教室を営んでいます。

 そんなリコからギターをもらい、健一は再び楽器の練習を始めることに。
 リコを通じて、音楽を趣味にしている熟年世代の友人もでき、健一の毎日は鮮やかに変わっていきます。

 娘の婚礼準備、役職定年、自分と親の老後、体力の衰え。
 様々な悩みのなか、健一の心に喜びの光をもたらした「音楽」。

 その光は、長年連れ添い、お互いを空気のように感じていたはずの妻、智子との夫婦仲にも影響を及ぼしていきます。

 リコとの出会いは吉? それとも凶?

 本作は「音楽」が熟年世代の人生を変えていく物語でもあります。
 RCサクセション、井上陽水、BARBEE BOYS、REBECCA。
 映画「トップガン」のアンセム、「イカ天」、「BANDやろうぜ」。
 80~90年代、健一が見聞きした音楽のモチーフがいろいろ登場します。

■母、智子

〝自分はこの先ずっと
 夫の顔色をうかがいながら
 生きていくのだろうか?〟

 三人目の主人公は真奈の母、智子。着物好きな彼女は着付け講師として活躍中。趣味の仲間にも恵まれ、朗らかな性格が慕われています。
 ところが夫の健一はいつも不機嫌。娘の婚礼についても意見が対立します。

 それでも明るく振る舞い、なごやかな家庭を築いてきたつもりの智子。しかし彼女は夫が娘の真奈や、趣味仲間のリコには気を遣い、ときには微笑むことに気が付きます。
 妻といるときは常に不機嫌。話をするのも億劫そうなのに。

 なぜ? そして これからもずっとこのまま?
 50代の夫婦って、どの家もこうな感じ?

 娘の婚礼の支度をしながら、智子の心は揺れ始めます。

■育った家から巣立ち、新しい家庭を作ろうとする娘の真奈と優吾。

 同じように親元を巣立ち、昔は仲睦まじく家庭を作っていた健一と智子。

 本作は結婚を機に、親世代、子ども世代が自分の人生について考え始める物語です。

娘が巣立つ朝」(文春文庫)。よかったらお手にとってみてください。

伊吹有喜

 

伊吹有喜『娘が巣立つ朝』

伊吹有喜『娘が巣立つ朝』 家庭崩壊のきっかけは、娘の婚約だった 家族って、なんだろう……?多くの共感を集めた家族小説の傑作が、待望の文庫化! 高梨家の一人娘・真奈が恋人の優吾を実家に連れてきた。爽やかな好青年なのだが、ど […]