「雲を紡ぐ」が刊行されました!

 桜が咲きそうな暖かさと思いきや、日が落ちるやいなや冷え込んで。落ち着かない気温の日々が続きます。

 皆さま、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

 私のほうはおかげさまで つつがなく過ごしております。

 

 さて本日はうれしいお知らせを! 「別冊文藝春秋」にて連載させていただきました「ホームスパン」が『雲を紡ぐ』というタイトルに改題して、このたび刊行されました。

 ただいま全国の書店さんにて発売中です。

伊吹有喜『雲を紡ぐ』

伊吹有喜『雲を紡ぐ』 「分かり合えない母と娘」 壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか? 羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。 いじめが原因で学校 […]

 連載中のタイトル、「ホームスパン」とは岩手県・盛岡市の伝統工芸の布。人の手で羊毛を洗って染め、糸に紡いで織り上げていく暖かい布です。この布は上着やコートに仕立てれば、親、子、孫の代まで使える堅牢さ。使えば使うほど持ち主の身に馴染み、軽やかになっていきます。

 作品の執筆を通して、昭和の早い時期につくられたジャケットやコートを拝見しましたが、雪国で丁寧につくられた布は 歳月を重ねることでより一層、着心地やさしく、人の身体を包み込むのです。

 年を経ることで劣化するのではなく、熟成されるもの。

 時を越えていくものに尊敬と憧れを抱いてきた自分にとって、それはこのうえなく魅了される存在でした。

 

 上梓にあたり改題した『雲を紡ぐ』というタイトルには、真っ白な雲に まだ何色にも染まっていない未来や夢、希望の意味を托しました。

 高校二年生の少女と彼女の父母、そしてホームスパンの工房を主宰する祖父。

 三つの世代がそれぞれの夢を紡ぎ、託し、進んでいく物語『雲を紡ぐ』。

 お手に取っていただけたら、とても嬉しいです。

伊吹有喜