埼玉県の高校司書さんが選んだ イチオシ本2020第一位に 「雲を紡ぐ」が選ばれました。
こんにちは、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。本日はご報告があります。
埼玉県の高校図書館司書の先生が選ぶ「高校生におすすめしたい本 ベスト10」の第一位の栄誉に「雲を紡ぐ」があずかりました。
先日、実行委員会の先生にお目にかかり、賞状をいただきました。今も眺めながらこの文を書いております。賞状の隣には、推薦してくださった先生のコメントもたくさん入っていて、何度も読み返しています。お心のこもったお言葉をありがとうございます。
一位を記念して、実行委員長の木下通子先生がインタビューをしてくださいました。こちらのサイトの「雲を紡ぐ 特別インタビュー」のバナーを押してみてください。
埼玉県高校図書館フェスティバル
https://shelf2011.net/
さて、このコロナ禍のなか、大人もつらいですが、高校生の方々も例年とは違う学校生活に疲れたり戸惑ったりすることも多いと思います。
そんなとき、ほっと一息つけるものが身近にあればと心から願います。本や音楽、ゲームに映画、スポーツ、手芸やジオラマなどの物づくり等々。
十代に好きだったものは、おそらくこの先、一生好き。大人になって一時離れることがあっても、再びそれを思い出し、戻るときが来ます。そのときなつかしい記憶の数々が心を温め、未来へ進む勇気をくれると思います。
私にとってそれは本でした。夢中になって本を読んでいるとき、一人のようでいて一人ではない時間が流れるのが好きです。登場人物たちがいきいきと作品のなかから語りだし、知人や友人のように感じられる瞬間もたまらなく好きです。
後半になると読み終えるのが寂しくなり、ページをめくる手が鈍りそうになるのですが、先を知りたくてたまらず、猛烈な速さで目が文字を追っていくのもスリルがあります。そして読了後に一息ついたら、再び読み返す。するとそこにまた新しい発見があります。
実は本は一回読んで終わりではありません。もし面白い本に出会えたら、何度か読み返してみてください。
ストーリーがすべて頭に入ってから再び読むと、登場人物たちのちょっとした仕草や動作、台詞の端々から、最初に読んだときには気付かなかったことや、言葉で語られることのない心情を感じ取ることができます。
その結果、初読の印象よりも味わい深く、場合によっては登場人物の見方すら変わってくることがあります。
それは作者がこっそりとしのばせた「たくらみ」です。
書き手は好きな人物を描くとき、あえて文章で説明せず、些細な台詞や動作、風景や持ちもののなかに思いを託すことがあります。秘められたその「たくらみ」に気付いたとき、登場人物と読み手、書き手の心情が重なり、一人のようでいて一人ではない時間がさらに濃く、豊かになります。
その「たくらみ」のしのばせ方が、作品の雰囲気や余韻となり、本好きの間でよく「節」と呼ばれる、作家それぞれの文体や語り方の特長に結びついているのです。
高校図書館には司書の先生、そして書店には書店員さんが素晴らしい本の情報をお持ちです。
迷ったら本の世界の地図を持つ先導者に道をたずねてみてください。きっと素敵な本に出会えます。
そんな一冊に出会えたら存分に味わいつくしたあと、何年か過ぎた頃、再びお手に取ってみてください。十代に読んだときと違う発見が必ずあります。
佳い本は常若、エヴァーグリーン、生涯の友。何年たっても色褪せず、何歳になっても新しい発見があるのです。
このたび栄誉を授かった「雲を紡ぐ」が、そうした常緑の一冊に加わることができたらと願っています。
埼玉県の高校司書の先生方、そしてこの公式サイトをご覧になってくださる皆様、本当にありがとうございます。
これからもこつこつと心をこめて書いていきます。亀のような歩みですが、友よ! 変わらずお気にかけていただけたら嬉しいです。
伊吹有喜
伊吹有喜『雲を紡ぐ』
伊吹有喜『雲を紡ぐ』 「分かり合えない母と娘」 壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか? 羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。 いじめが原因で学校 […]