冬森灯さんの帯のコメントのお話と「小説現代」6&7月号の「〆切めし」、そして岩手日報リレーエッセイ第三回目のお話
こんにちは、相変わらず蒸しますね。いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
さて、このたびご縁があり、ポプラ社から上梓される冬森灯さんのデビュー作「縁結びカツサンド」の帯のコメントを書きました。
この作品は昔ながらのベーカリー「コテン」をめぐる物語。おいしいパンと人の情のぬくもりに心がほっとゆるみます。
私はチョココロネがむしょうに食べたくなりました。そして、家でパンを焼きたくなりました。心とお腹があたたかく満ちたら、多少のことは乗り越えられる気がいたしますね。
そして、ご報告が遅れてうっかりしていました。このたび「小説現代」の「〆切めし」というコーナーに登場しております。
こちらは作家たちが〆切間際に何を食べているかというエッセイで、私も楽しく拝読しております。しかし、自分が登場するとなると、かなり照れるもの……でも、お米はどれだけ食べても食べ飽きない唯一無二の食材。やっぱり好きなのです。
さて、岩手日報のリレーエッセイ、「イワテライフの楽しみ方」、第三回目を迎えました。今回は「たんきり」と「きりせんしょ」という謎めいた名前のお菓子のお話です。
謎めく名前と食感の北の城下町のお菓子|岩手日報 IWATE NIPPO
https://www.iwate-np.co.jp/article/2020/7/2/80659
この「きりせんしょ」に出会ったのは「餅店」でした。この「餅店」。盛岡を歩いていて「○○餅店」というお店の名前を初めて見たとき、当初は「鏡餅」や「のし餅」といった、真っ白なお餅の専門店かと思いました(○○部分には名字や屋号が入ります)。
さっそく、お店に入ってみると、もちろんそうしたお餅も扱っていると思うのですが、カウンターにずらりと並んでいたのは、おいしそうな大福もちやお団子。餅店とは「大福もち」、「きりせんしょ」などをはじめとした、餅菓子を中心とした和菓子屋さんでもあったのです。
このエッセイの「きりせんしょ」のほかにも、私が心奪われたのは醤油味の「しょうゆ団子」。そして「お茶もち」という名前の、串に刺したお団子を平たく伸ばし、すりつぶしたクルミと醤油をつけてあぶったもの。二つともそれほど甘くはなく、おかずになるお菓子と申しますか……盛岡であちこち出歩いてお昼ごはんを食べそこね、お腹はすいたけれど、今から食べると夕食が入らないという時間に、このしょうゆ団子とお茶もちを買い、滞在先でお茶と一緒に楽しむのが好きでした。
この「お茶もち」、私はずっと甘さ控えめの醤油味だと思っていたのですが、今回、この文を書くにあたりインターネットを見てみましたら、甘辛いクルミ醤油味もあるらしいのです。
甘めのクルミ醤油味。さっぱりした醤油味も好きですが、第二回目に登場した和クルミのソフトクリーム・醤油がけを思い出すと、クルミ&甘辛い醤油味も絶対に好きな味です。今度盛岡をたずねたら、出かけてみようと思います。
「きりせんしょ」と同じく「お茶もち」の世界にも、さまざまな個性がある様子。まことに味わい深いです。
しかし、いろいろ歩いたつもりでいても、まだまだ知らない味があるものです。きっと今、自分が毎日過ごしている町も、歩けば歩くほど、いろいろな発見があるに違いありません。
梅雨が明けたら、暑さに弱らない程度に散歩を楽しもうと思います。
それではまた、おたよりします。
皆様、どうかお健やかにお過ごしください。
伊吹有喜