「今はちょっと、ついてないだけ」が光文社文庫から発売中です。
冷えてきたなあ、とは思うのですが、今年は例年にくらべて比較的温かいですね。いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
さて嬉しいお知らせがあります。2013年から連載させていただいた「彼方の友へ」がいよいよ本にまとまり、発売されました。
伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』(文庫版)
伊吹有喜『今はちょっと、ついてないだけ』(文庫版) バブルの頃、自然写真家としてもてはやされた立花浩樹は、ブームが過ぎると忘れられ、所属事務所に負わされた多額の借金を返すうちに四十代になった。カメラも捨て、すべてを失い […]
こんにちは、少々遅くなってしまったのですが、新刊のお知らせを。2009年に上梓した「今はちょっと、ついてないだけ」が光文社文庫に収録されました。現在、文庫の新刊として書店さんに並んでいます。
この作品の主人公は立花浩樹という四十代のフォトグラファー。
彼はバブルの時代、「ネイチャリング・フォトグラファー」という触れ込みで、青年写真家としてテレビの冒険番組に出て人気を博した人物です。しかし、派手な売りだされ方や、外見とは裏腹に、本人は控えめで、いたってつつましやかな性格。
そんな性格が仇となり、バブルの終焉とともに、多額の借金を背負うはめとなり、故郷に帰ったのですが、ようやく返済を終えたとき、彼は自分の人生を見直します。そしてあることをきっかけに東京へ戻り、ためらいながらも再び新たな生活を始めようとするのですが──。
彼の再挑戦と、彼をめぐる人々の人生模様を描いた連作短編の一冊です。
“It never rains but it pours.”。「降れば土砂降り」というこのことわざは、日本で言えば「泣きっ面に蜂」。
ただ、同じ「踏んだり蹴ったり」な状態でも、英語のこのことわざを見るたびいつも、「でも明日は晴れる」という言葉が対句のように浮かび、希望を感じていました。
「降れば土砂降り(でも明日は晴れる)」のです。
「今はちょっと、ついてないだけ」は、その「明日は晴れる」を願う人々の物語です。お手に取っていただけたら、うれしいです。
文庫化にあたり、次回はこぼれ話を少し……。
それでは素敵な秋をお過ごしください。
伊吹有喜