あけましておめでとうございます その2

 さて昨日に引き続き、本日は新しい本のお話を少し。

 本年はまず元日から発売の本がありました。文庫になりました「カンパニー」です。

伊吹有喜『カンパニー』(文庫版)

伊吹有喜『カンパニー』(文庫版)  あなたって、どこでも傍観者なのね。家を出た妻にそう告げられ、47歳の会社員・青柳誠一は呆然と佇む。そして災厄は会社でも──。窓際部署に異動か、社が後援するバレエ団への出向、どちらかを選 […]

 どの作品も書いている最中はワクワクするのですが、この作品は登場人物が特に一癖ある突き抜けた人々なので、かなりときめきました。

 青柳も高野も好きなのですが、わたくし、阿久津がかなり好みでして、連載中はあちこちの場面に彼が顔を出してしまい、単行本のときに登場回数を減らしたのも懐かしい思い出です。

 でも実際にあの手の押しの強いハンサムというのか、イケメンというのか、野性的な男というのか、なんとも形容しがたいですが、あの手の人物の前に出るとおっかなくて言葉も出ないので、あまり近寄れないです。遠くからそっとその言動を眺めていたいものです……って、これではあやしい人みたいですね。

 この作品の取材にご協力いただいた「NBAバレエ団」の公演もとても素敵なのです。二月の新国立劇場「ホラーナイト」の公演も今から楽しみにしています。

 そして「カンパニー」で忘れがたいのは宝塚歌劇団での舞台化です。

 月組の皆様はまことに麗しく、本当にまぶしかった……。そして私もそうですが、公演を鑑賞した身内や知人、友人たちの間で宝塚歌劇のファンとなった方が続出。巷では心奪われることを「沼」と表現するそうですが、こんな美しい沼なら、はまっても悔いなしですよなあ~。

 文庫化にあたり公演前に「小説新潮」に掲載された珠城りょうさん、愛希れいかさんとの対談も収録されています。お二方ともすらりと背が高く、ほんとうに爽やかで素敵でした!

 新潮文庫「カンパニー」。ぜひ、お手にとってみてください。

 

 さて、一月下旬には「別冊文藝春秋」での連載「ホームスパン」が「雲を紡ぐ」に改題して刊行の運びです。

「ホームスパン」とは親、子、孫の代まで着られる堅牢で、美しいウールの布のことです。この作品は大正から令和の現代まで脈々と盛岡でつくられている布をめぐる家族の物語です。発売が近くなりましたら、またご紹介させてください。

 

 そして初夏には「小説推理」連載の「犬がいた日々」が「犬がいた季節」に改題して刊行予定です。三重県の高校を舞台にした、昭和から平成、そして令和へ渡るこの作品もお楽しみいただけたら嬉しいです。これからさらに磨きをかけていくので、お心に留めていただけたらと思います。

 

 さて、「なでし子物語 常夏の光」の連載もいよいよ佳境に入ってまいりました。

 撫子の花のように小さく、時代の風に吹かれたらはかなく揺れてしまう存在であっても決して折れない。凜として、顔を上げて生きようとする「なでし子」たちの物語も今年はいよいよ完結します。

 昨年は出かけた先で、たくさんの嬉しいお言葉をいただき、とても励まされました。ありがとうございます。

 こちらも引き続き、お気に掛けていただけたら嬉しいです。

 

 今年は新連載もいくつか始まる予定で、舞台になる町や時代について取材と勉強を始めています。「犬がいた季節」の追加取材で四日市や鈴鹿、名古屋にもうかがう予定です。今年は日本のあちこちの街を歩く年になりそうです。

 

 さて、あたたかいとはいえど、冬は冬。冷えるときは冷えこみますので、皆様、お身体をおいといください。

 それでは近いうちにまた!

伊吹有喜