宝塚歌劇 月組の「カンパニー」の公演が始まりました。同じ日に「天の花 なでし子物語」も刊行します!

 一月が過ぎるのはあっという間で、いよいよ宝塚歌劇 月組による「カンパニー」の公演が9日より宝塚劇場で始まります。

 私もワクワクしながら、新幹線に乗り、宝塚へ行く予定です。子どもの頃、お休みの日になんとなくタカラヅカの劇場中継を眺めていたものですが、まさか三十数年後に自分が書いた小説が、あの舞台にのるなんて夢にも思わなかったです。本当に夢じゃないかしら? と、時折思います。

 カンパニーを連載させていただいた「小説新潮」にて、月組のトップスターの珠城りょうさんと、トップ娘役の愛希れいかさんの対談が掲載されています。一部が今、インターネットでご覧いただけます。

『カンパニー』舞台化記念座談会 作家「伊吹有喜」×宝塚歌劇団月組「珠城りょう」「愛希れいか」 | デイリー新潮

 この対談は年末に宝塚歌劇団で行われたのですが、青柳役の珠城さんと、美波役の愛希さん、お二人がソファに座っている姿は本当に麗しくて、ため息が出そうでした。

 

 そして同じ日の9日に「天の花 なでし子物語」も刊行されます。

伊吹有喜『天の花 なでしこ物語』

伊吹有喜『天の花 なでしこ物語』  遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は寂しい境遇にあっても、周囲の人々の優しさに支えられて子ども時代を生き抜いてきた。18歳になった耀 […]

 この作品は高校三年生になった耀子が、常夏荘を飛び出すところから始まります。バスや電車に揺られながら思い出すのは、緑豊かなあの地で立海や龍治と過ごした四年前の夏のこと──。

 時間的には「なでし子物語」と「地の星」の間に位置するこの作品は、耀子と立海が子どもでいられた最後の夏と、耀子の結婚のいきさつを描きます。赤いオープンカーと、ジューシーなハンバーガーに彩られた1984年の夏は、耀子たちにとって特別でしたが、幼い二人を見守っていた龍治にとっても、そののち生涯忘れられない夏となるのです……。

 龍治のその思いが明かされる第四部「常夏の光 なでし子物語」、あと少しで「asta」にて連載開始です!

 美しく育った耀子の娘、瀬里と、そんな彼女に慕われる、若き大叔父の立海、自分の立海への思いがよくわからないまま仕事に邁進し続け、三十代を迎えた耀子。そして耀子たちが起業した小さな会社の発展とともに、変貌しようとする山奥の集落、峰生。

 小さくて風にあえなく揺れるけれど、うつむかず、天を仰いで咲こうとする「なでし子」たちの物語。よかったらぜひ引き続き、常夏荘の世界にいらしてください。

 

 さて……もう少し、宝塚歌劇団のお話を。

 お稽古場で月組の皆さんにもお目にかかったのですが、そのお稽古場、とても広くて天井が高かったのです。剣や槍などを持ってお稽古しても、剣先が天井に触れない高さとか。そして、皆さん、すらりとした立ち姿が本当にまぶしくて、私はすっかり舞い上がってしまい、ご挨拶の言葉もしどろもどろ。お一人お一人に素敵な目力があり、なんとなく目が合っただけで、勝手に胸がドキドキするのです。

 私がうかがった日はお稽古の初日近くで、演出の石田昌也先生を囲んで、皆さん、作品の概要の説明を聞いていらっしゃいました。静かに佇んでいるけど、いざ音楽がかかると、全員ダンスがすごく上手で、歌もお芝居もなさるんだよなあ~~などとのんびり眺めていたら、目があった方にニコッと微笑みかけられて、再びドキドキ。なんて可愛い方! 

 広いお稽古場を出てしばらく廊下を歩いていると、階段の方角から透き通った女性の歌声が聞こえてきました。団の方のお話では、階段の踊り場あたりで声が反響するので、レッスン前に発声練習も兼ねて歌を歌う人がいるとのこと。

 たしかに合間に発声練習のようなものもまじっていたのですが、すばらしくのびやかで澄み切った歌声にうっとりしました。それと同時に、これで練習なのか……とも。

 本番になったら、さらに美しく磨かれて舞台に現れるのだと思うと、すごい世界だとあらためて思いました。そして本当に丁寧に、寸暇を惜しむようにして、それぞれが自分の技量を磨いていることも実感しました。

 東京公演のチケットもそろそろ発売が始まります。

 壁際に追いやられた会社員とダンサーが手を組み、ひたむきさを武器に反撃に転じようとする「カンパニー」。

 舞台とともに、小説もお気に掛けていただけたら嬉しいです。

伊吹有喜